2024年は労務関連の法改正が多く予定され、特に社労士の役割が一層重要になります。企業や労働者への影響が大きい最新の改正内容と、それに伴う実務対応について解説します。
1. 労働条件明示のルール変更
2024年4月から、労働条件通知書の明示内容が新たに強化されます。これまで労働契約の締結時に明示すべき事項には雇用開始時の就業場所と業務内容が含まれていましたが、改正後は「変更の範囲」も明示が必要です。この改正により、将来の異動や配置転換が予想される場合には、従業員に対して明確な範囲を通知する義務が生じます。
さらに、有期雇用の更新に関しても、「更新上限の有無」や「無期転換申込の機会」について書面での明示が義務化されます。これにより、更新の上限や通算契約期間を設ける企業は、その理由を従業員に事前に説明しなければならず、特に有期契約の契約更新管理が厳格化されます。
2. 年収の壁に対する支援強化
2023年10月に開始された「年収の壁・支援強化パッケージ」が引き続き注目されています。日本では、短時間労働者が社会保険の扶養範囲内で働くことを選ぶ傾向があり、年収が106万円や130万円を超えると社会保険料が発生します。2024年には、この「106万円の壁」が従業員51人以上の企業にも適用拡大され、短時間労働者が扶養から外れる可能性が高まります。
この状況に対応するため、政府は賃金増額や手当支給を行う企業に最大50万円の助成金を支給する制度を導入しました。企業は、短時間労働者が年収の壁を気にせず働けるように、賃金体系の見直しや労働時間の調整を図るべきでしょう。
3. 裁量労働制の見直し
専門業務型裁量労働制においても重要な変更が加わります。2024年4月以降、この制度の導入には労働者の同意が必要となり、期待される役割と責任の明確化が求められます。企業は、対象労働者に対し業務の期待役割を明確に伝えるとともに、労働時間管理の透明性を高める必要があります。
4. ストレスチェック制度の拡大
現在は50人以上の事業場に義務付けられているストレスチェックが、50人未満の事業場にも適用される可能性が検討されています。これは働き方改革の一環で、メンタルヘルス対策が企業の義務として一層強化される方向です。中小企業にも対応が必要となるため、今後の動向に注目が必要です。
まとめ
2024年度の法改正は、労働条件の透明化や短時間労働者の支援強化など、労働環境の改善に重点が置かれています。社労士としても最新情報に基づいた助言や対策の提案が求められます。改正内容を正確に理解し、企業の労務対応を支援するために、これらのポイントを押さえておきましょう。